死霊むせび泣く声
 この怨霊はどうやら小津原の除霊ぐらいじゃ、到底消えない類のものであると。


 やはり憑依しているのだ。


 しつこいまでに。


 俺の目の前では赤黒い水が流れ続けている。


 これで手を洗うと、血まみれになってしまうので、俺は汚かったが洗浄せずに里夏の待つカウンター席へと舞い戻った。


「どうかしたの?顔が凍りついてるし」


「いや。何でもないよ」


 俺はアンモニア臭のする手を持っていたハンカチで拭って、冷静さを取り戻す。


 そしてお替りしていたカクテルに口を付けた。


 水分が体内に入ることで、少しはマシになる。


 人間の体内には血液が循環し続けているのだし、夏場などは渇けば、誰でも水を口にするのだ。


 極自然なこととして。
< 117 / 155 >

この作品をシェア

pagetop