おしゃべりな百合の花
 龍一は今日一日、美百合と一緒にいて気付いたのだが、美百合は何者かに狙われている。


 最初、自分が狙われているのかと思った。


 が、龍一殺害なら、いくらでもチャンスはあったはず。


 暗殺が狙いじゃない、美百合の拉致が狙いだ。


 奴等は、美百合が龍一と別れ、一人になるのを待っている。


 予想以上に美百合が激怒してしまったため、安全に彼女を自宅へ送り届けるという『総仕上げ』が危うくなった。


 龍一は、俯いて頭に載っているパスタを机の上にさっと払い落とすと、慌てて会計を済ませ、美百合の後を追った。


 案の定、足早に歩道を歩く美百合に、後方からゆっくり忍び寄る、不振な漆黒のワゴン車が一台。


 龍一が全力疾走で美百合に追いつくと、そのワゴン車は急にスピードを上げ、夜の闇に消えた。


 美百合と並んで歩く龍一に、


「アバズレに、まだ何か用?」


 と、泣き濡れた顔で意地を張る。


「時間も遅いし、送るよ。」


「ヤル相手探してるの!邪魔しないで。」


 龍一は困り果てて、溜め息をついた。


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