おしゃべりな百合の花
 そして、遺体への攻撃を止めると、美百合はその場に立ち尽くして、溜まったものを爆発させるように大声で泣き出した。


 龍一は、そんな美百合をそっと優しく抱き締めた。


 美百合の、度を越した激しい感情表現には、もう慣れた。


 龍一は今さら驚かない。


 美百合が落ち着くのを待ってから、龍一は美百合にそっと囁いた。


「時間がない。行こう。」


「どこへ?」


 美百合が顔を上げて、不思議そうに龍一を見た。


 龍一はそれに答えず、自分が着ていた革のブルゾンを脱ぐと、それを美百合に着せ、丁寧に前ファスナーを閉めてやった。


 サイズの合わない龍一の上着は、美百合の手をすっぽりと覆い隠した。


「おいで。」


 と言うと龍一は、美百合の肩を抱き寝室を後にした。


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