水音
「なんか普通って逆じゃない?」

「だなッ!」

二人で笑い合った。


部屋の灯りを消し、キャンドルに火をつけ、二人で吹き消した。

快は無理するなって言ったけど、あたしはケーキをほとんどたいらげた。

甘い物が苦手なあたしだったけど、頑張って食べた。
「ぽちゃるぞ」
「いーのッ!」

ムキになって食べた。

甘い…甘い…身体中に満ちわたる幸せ。

「来年の誕生日は俺が指輪買うからね。」

来年なんてわからないけど、その言葉を素直に信じられた。

来年もずっとずっとこの幸せが続くのだと…


それから、もう一度部屋の灯りを消し、あたしは快に完全に溺れいった。

生クリーム味の甘い口づけ。

あたしはこれまでにない程の幸せを感じていた。

孤独になる事で手にいれた幸福…



でも、快と付き合った中でこの日以上に幸せを感じることは、もうなかった。

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