誠に生きた少女
「朝稽古の最中に、二番隊の柳田から試合を申し込まれたんです。」
ぽつりぽつりと話し出す藤野の言葉を、優希は黙って聞いていた。
「俺、槍は得意ですが、刀はあまり強くないので、もう少しのところで負けてしまいました。そのとき、柳田が言ったんです。こんなに弱いのに零の隊士かよって。」
「それで、頭にきて柳田君に向かっていったの?」
優希の言葉に、藤野は大きく首を振った。
「ち、違います!負けたのは自分の責任です。言われても仕方がないと耐えました。
でも・・・」
そこで言葉を濁す藤野に、優希は首を傾げる。
「でも?」
「藤野、言葉にしねぇと伝わらねぇんだ。ありのままを話せ。」
事情を知っているらしい永倉に促され、藤野は思い切ったように言った。
「俺が黙っていたら、最後にあいつ馬鹿にするように言ったんです。
その零を引っ張ってるのが、あの弱っちぃ女隊長じゃ納得だけどな。・・・て。」
最後には、声を震わせながら藤野は優希に訴えた。
「俺、自分がけなされるのは耐えられます。でも、でも・・・
隊長が馬鹿にされるのは許せなくって・・・つい、手が出てしまいました・・・。」
すみませんと、床に着くほどにもう一度頭を下げる藤野を、優希は黙って見つめていた。
奥村は、優希がショックを受けているのではと心配で、優希に走りよろうとしたが隣の永倉に腕をつかまれた。
「永倉さん?」
「心配ねぇ。あいつはそんなに弱くない。」
永倉の言葉に、奥村は優希に視線を戻した。
「藤野君、顔を上げて。」
優希の言葉に、藤野はゆっくり顔を上げ、自分の隊長を見た。