誠に生きた少女
「自分のために怒ってくれる隊士がいるなんて、私は幸せ者だね。」
「隊長・・・」
優希の笑顔に、藤野はまた目を潤ませた。
「でも、だからといって局中法度を破ってはいけない。今回は永倉隊長に助けられたの。
次はないと思いなさい。」
はい、と頷く藤野に、優希はもう一つ話し出した。
「こんなことで、命を無駄遣いしないで。あなたが零に来てから、あなたの命は私が預かってるの。今回みたいな事で、私に預けた命を取りに来ることはやめて。」
優希の厳しさの中に、優しさがある言葉に、藤野はまた頭を下げた。
その二人の様子を、奥村は安心したように見つめていたが、永倉の顔はどこか寂しそうだった。
「さて、そしたら仕事に戻って。」
「はい。」
藤野が立ち上がり、その場を後にしようとしたときだった。
「夜風隊長、失礼します。」
どこから現れたのか、山崎が優希の前に膝を付いていた。
「烝、何かあった?」
「はい。例の件で動きが。至急出て頂きたく参上しました。」
「わかった。藤野君も聞いた?」
「はい。」
「準備してきて、すぐ出るから。烝は大杉に連絡して。」
「はい。では。」
いっせいに散った二人の部下を見送って、優希は永倉と奥村に向き直った。
「ごめんね、行かなきゃならないの。買い出し、永倉さんにお願いしていい?」
「あぁ、無理すんなよ。」
「うん。じゃ。」
そういって走り出す優希の背中を、永倉は複雑な気持ちで見送った。