誠に生きた少女
優希が去った後、奥村と永倉は二人で買出しに出掛けた。
買出しといっても、日用品の買い足しだったので、一刻もかからず終えることが出来た。
その帰り道、屯所の近くの寺の前を通りかかった時だった。
「あ、新八にいちゃん!」
屯所では聞かない、子供の声に奥村が顔を向けると、寺の境内で遊んでいる子供達が大きく手を振っていた。
「さきとゲン太じゃねぇか。今日はまた数が多いな・・・。」
子供達の中に知り合いがいるらしく、永倉が足を止めた。
そこに、さきとゲン太と呼ばれた二人が駆け寄ってきた。
「新八にいちゃん、今日は優希ねぇちゃんいないの?」
「あー、あいつ今、忙しいんだ。当分来れねぇかもな。」
「えー・・・」
「最近、総司もこねぇんだよ。つまんねーよぉ。」
二人の抗議の言葉に、永倉が頭をかいた。
「そう言われてもなぁ・・・。そうだ、このにぃちゃんがまた遊びに来てくれるからよ。」
「え?」
いきなり永倉に指を指され、奥村は驚いた。
「雅貴にいちゃんだ。総司の友達だから、きっと仲良く遊んでくれるぞ。」
「ほんとう!?」
きらきらした視線を子供達に向けられ、奥村はつい頷いた。
「今日は、まだ仕事中だから兄ちゃん達は帰らなきゃならねぇんだ。またな。」
「はぁーい。新八にぃちゃんもまた来てね。」
「おぉ、じゃあな。」
そう言って、屯所に向かって歩き出した永倉の背中を、奥村は慌てて追いかけた。