誠に生きた少女
「優希!!」
お互い刀をしまっていたために、とっさの動作が遅れてしまった。
振り下ろされる刀が目の前まで迫っていた。
「ぐっ!!」
声を挙げたのは相手浪士だった。
その首筋には、苦無が突き刺さっていた。
刀を振り上げたままの体制で、男は力なく崩れ落ちた。
その男から少し離れた場所に、山崎は立っていた。
「・・・はは、さすが烝・・・。」
「さすがじゃ済まんやろ。お前、相手に同情して手加減する癖、いい加減直せや。」
冷静な山崎が、珍しく怒っているようだった。
永倉がいることも忘れて、口調が崩れたものだった。
「山崎、助かった。」
「永倉隊長、お疲れ様です。」
ふと我に返ったのか、山崎はすぐに普段の様子に戻る。
すると、山崎が投げた苦無の様子をまじまじと見ている優希に声を掛けた。
「夜風隊長、やつらが動いたようです。」
「え?」
山崎は、寺の境内からさきとゲン太が消えたことを報告した。
山崎の言葉に、優希の表情が変わった。
「この事件、隊長の言う通り、まだ何か裏があったようです。」
「烝、至急藤野を呼んできて。大杉はそのまま鈴木の見張りをするように伝えて。
藤野と二人で合流しなさい。私と永倉さんはこのまま境内に向かうから。」
「はい。」
山崎の返事を合図に、3人は動き出した。
「急ぐぞ。」
「うん。」
永倉と二人で、境内への道を走りながら、優希は疼く不安を押さえられずにいた。