誠に生きた少女
さきとゲン太が遊ぶ境内の裏には、薄暗い森が広がっていた。
奥村は、その中をがむしゃらに走り回っていた。
だが、その足をふと止め、立ち止まった。
「・・・もし、見つけたら、俺はどうすればいいんだ?」
奥村の心に、急激に不安が広がっていった。
今まで押さえ込んでいたものが、口に出したとたんにあふれ出してきたのだ。
確かに、剣道は習ってきた。
祖父の家が道場だったため、小さい頃からずっと竹刀を振ってきた。
優希たちには話していないが、高校の頃には全国大会で優勝した経験もあるほどの実力だ。
「・・・でも、竹刀だ。」
そう、自分が振ることが出来るのは竹刀なのだ。刀じゃない。
ましてや今は、その竹刀すらも身に付けていないのだ。
現代で生きてきた奥村にとって、死というものに直面することはほとんどない。
今自分は、はじめてそれに直面しようとしているんじゃないか。
そう考えたら、怖くて仕方がなくなった。
足は、前に進もうとしなかった。
まるで地面と一体化したみたいだ。
こうしている間にも、さきとゲン太は殺されるかもしれない。
頭では分かっているのだが、体が動くことを拒んだ。
その時、よく知る声が奥村の耳に届いた。
「ま、雅貴にぃちゃん!!!」
その声に、ゆっくり顔を上げた。
数十メートル先に、こちらに向かって走る先の姿があった。
「さき・・・。さき!!」
何とか声は出したが、足がまだ動かない。