誠に生きた少女
「・・・くそっ。動けよ!」
自分を叱咤するように奥村が声を挙げたとき、さきの後で一筋の光が走った。
「・・・さき?」
その一瞬の光の後、先はその場に崩れるように倒れこんだ。
今まで気がつかなかったが、先の後には、真っ黒の袴をはいた男が一人、刀を片手に佇んでいた。
その刀からは、綺麗な赤い液体が流れ落ちていた。
「さ・・・さ、き?」
奥村がこの時代に舞い降りて、初めて死を経験しようとしていた。
さきはほんの数メートルまで、奥村に迫っていた。
少し離れたその場所で、さきは今倒れこんでいる。
さきの下には、赤い血だまりが広がろうとしていた。
「わ・・・う、うわぁ・・・。」
腰が抜けたように地面に座り込んだ。
今奥村を支配しているのは、さきが殺された悲しみではなかった。
次は、自分が殺される恐怖だった。
黒袴の男が、冷酷な目で奥村を見下ろしていた。
「・・・ぁ、ぁあ・・・」
必死に後ろに下がろうとする奥村。
そんな奥村と、黒袴の男の前に守るように誰かが立ちふさがった。
「あ・・・。」
山崎が来てくれたのだと、とっさに判断した奥村は、自分の前に立ちふさがった影にすがり付こうとして、やめた。
「・・・え?」
奥村の前に立ったのは、山崎でも、零の誰かでもなかった。