誠に生きた少女
「…ゲン太?」
奥村と黒袴の男の間に立ちふさがったのは、ゲン太だった。
両手に木の棒を構えて、顔を涙でぐちゃぐちゃにして、体をぶるぶると震わせながら奥村の前に立っていた。
「ま、雅貴にぃ、ちゃん。」
「ゲン太…。」
奥村に背を向けたまま、ゲン太が声を震わせながら話し出した。
「俺、…さき、ま、守れなかった…。」
その間にも、黒袴の男はゲン太と奥村に近づいてくる。
「にぃちゃんに、刀、お、教えてもらったのに…守れなかった。」
ゲン太が握る木の棒の先は、刀に切られたように斜めに鋭く尖っていた。
きっと、あの男に向かっていき、棒を切り落とされたのだろう。
「だから、にぃちゃんは、絶対守るんだ。」
「…ゲン太!!」
奥村が叫んだときには、ゲン太は最初の一歩を踏み出していた。
「うわぁぁぁぁあぁ!」
切ない叫び声とともに、ゲン太は男に棒を振り下ろした。
精一杯の一撃を、軽く剣先で払うと、男は何の戸惑いもなく、ゲン太の胸に刀を落とす。
「ゲン太!!」
男に飛び込んだときの勢いで、わずかにゲン太の体が横に倒れ、男の切っ先は、ゲン太の肩口に突き刺さった。
「ぐあぁ!」
ゲン太の肩に刺さった刀が抜かれ、男がもう一度構えなおした。
そしてもう一度、戸惑いなく一気に、倒れたゲン太の胸に刀を下ろした。
奥村は、耐えられずに目を硬く閉じた。