蒲公英
Gegenwart Ⅰ
河南子がどうしてもと言うので、僕らは休日、未来と春日が住む木立家へと足を運んだ。






彼らは夫婦だ。

幼なじみで生まれたときから共に過ごし、大学を卒業すると同時に籍を入れた。

卒業証書と婚姻届を掲げて笑いあったふたりを祝い、即席のパーティーを開いたことを覚えている。

ふたりは未だ子供に恵まれず、新婚のような生活を送り続けていた。





「久しぶりね」




呼び鈴を鳴らすとすぐに春日が顔をだした。

僕を見てにっこりと笑う。




「おとといみんなで飲んだばっかりだろ」

「でも昨日は会わなかったでしょ？」

「毎日会わなきゃ久しぶりかよ」




僕らの仲間は血気が盛んな奴ばかりだったが、春日だけはおっとりしていて、怒ることを知らないゃうな女だった。

いつも独自の時間で動いていて、論点がズレていることはしばしばあるが、どんなタイミングでも春日が口を開くだけで場が和むのは彼女の魅力故だろう。

ふわっとした仕草と少し下がりぎみの目尻が穏やかな雰囲気を引き立てている。

未来にはそこがかわいくて仕方ないらしい。
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