蒲公英
「なぁ、お前らなんかあった?」




耐えきれずに未来が聞いた。

ぴくっとあかりの肩がわずかに震え、大樹の返事に聞き耳をたてている。




「…別に」




冷たく飛びでた一言。

あかりはいっそう俯いた。




「なんなんだよ、いったい」

「あかり。大樹になにかされたの?」




心配の声が飛び交う中、僕はひとりで酒を飲むことに専念した。

稀沙も同様である。

彼女はなにがあったのかまでは知らないはずだが、そういうことには興味がないらしい。

昔から揉め事は当人同士仁任せて余計な口を挟むことはしなかった。




「おい、湧己!お前なんか知ってるだろ?」




未来に問われ、僕は不自然に視線を泳がせた。

毅然とした稀沙とちがい、僕は好奇心が旺盛な方である。

下世話な興味もそれなりにある。

その僕が黙っていれば知っていると吐露しているも同然なのだった。
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