蒲公英
「蒲公英の花言葉、知ってるか?」

「え?」






不意にマスターが言った。






「神託だ、と波止場が言っていたな」






…もちろん僕は知っている。

それを沙羅に教えたのは僕なのだから。






―神様なんていらないのに。






以来、沙羅はよくそう言って困ったように微笑んだ。






「分かるか?」

「神のお告げ、ってことだろ?」






突然なんの話をしているのか訝しみながら僕は答えた。






涙はいつのまにかとまっていた。






「ちがう」






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