アルカディア少女
パンッと軽い音が部室に響く。
「ヒィッ!」
銃口から赤が・・・そして白が青が緑が、紙ふぶきとなって飛び出した。斉藤は死んでいない。
「どういうことだ?」
己が打った銃から飛び出してきたものに訝しげな声を孝一が上げた。彼は彼女は見る、目の前で心底嬉しそうに微笑む彼女を。彼女の瞳の奥も笑っていた。
「孝一。証拠、ありがとう。」
二コリと微笑んだ恋人のを見、孝一はああ、これが全て彼女の仕組んだ計画の全てなのだとすぐに悟った。これは、彼女の愛情の喜劇だったのだ。作者は詩織で、役者は俺とそして足元で気絶しているこの斉藤ミキという女。全ては、彼女のシナリオどおりの出来事だった。
「詩織、これで満足か?」
孝一は手に持ったマグナムを詩織に返しながら問うてみた。
「ええ、すごく満足したわ、とってもおもしろかった。」
詩織は笑いながら、自分のポケットからもう一つの、本物の彼のマグナムを返しながらそう答えた。
しばらくの沈黙。動くものといえば、舞いがった色とりどりの紙ふぶきだけ。秒針が移動している。
「それじゃあ、詩織。もう、こんな所にいるのはやめないか?」
「ええ、いいわよ。何処に行くの?」
提案した孝一に、詩織が首を傾げて尋ねると、彼は彼女の手を執り歩き出した。歩き出したその時、ドンッと足元の物体を思い切り蹴ってしまった。靴が汚れる。
「ねぇ、孝一。何処に行くのよ?」嬉しそうな女の声。
「決まってんだろ、俺の家だ。」愛に溺れる男の声。
ガラッと扉が音を立てて、閉じられた。