空き瓶ロマンス



今わの際は、死因がまるでガンだと思えないほど安らかだったと、斉藤さんから聞いた。
 

きっと、君たちに会えたから、安心したんだろうと。
 

加えて、葬儀に遺族席に並ばないか提案されたが、私たちはその場で断ってしまった。


母はもう、斉藤家の人間だ。

ややこしい関係にある私達に、そんな資格は無いと思った。

だから、普通の会葬者に紛れて、普通に参列するつもりでいた。


けれども私は式場で、思わぬ人物と再会を果たすことになったのだった。



 
むせ返りそうになるほど濃く立ち込めた線香の煙と、木魚、静かな読経。

喪服の人々。
 

白を基調に飾られた、死んだ人のための祭壇。
 

その中央にかけられた母の遺影は、病気になる前に撮影されたものらしかった。

母の頬は痩けておらず、健康的に弾けるような笑みを浮かべ、髪だってちゃんとあった。



何より、元気で少し若い母の容貌は、私とそっくりだった。



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