空き瓶ロマンス
 


テンションを上げようと努力しつつ、ふと油断した隙に、またどんよりと暗い事を考えてしまう、というのを何度か繰り返し、


スポーツ用品店や、複数の雑貨屋などを彷徨い、しばらくした頃。


気付いたら、みちるが姿を消していた。

 
数歩歩いて、きょろきょろと周囲を観察した。
 

どこにもいない。


更に通路まで歩き、周囲がよく見渡せる場所を確保した。
 

携帯電話を開く。
 

メールも電話もない。
 

トイレだろうか。でも、一言もなしに?
 

この場合、みちるは迷子? 


それとも、迷子は私?
 

どちらでもいい。確実なのは、私がとても不安に陥っていた事だった。
 

震える指でたどたどしくボタンを押し、携帯電話を顔の横に押し当てる。
 

五回目のコールで、みちるが出た。
 

瞬間、私はとんでもないものを見てしまった。


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