空き瓶ロマンス
私がいたのは二階の広い通路で、そこは一階から吹き抜けになっていた。
手摺に手をかけ、一階を行き交う人々の流れの中に、――信也さんを見付けた。
電話の向こう側で、みちるが何か言っている。
だけど、何も聞こえない。
言葉として認識出来ない。私の脳はフリーズしていた。
音も、色も、温度も、感じない。
――信也さんは、女の人と一緒だった。
髪の長い、きれいな女の人。背も、私よりぐっと高い。
水色のコートに、茶色いブーツ……。
――学校指定のダッフルコートに、ローファーの私とは違った、大人の女の人……。
二人は、何か喋りながら、笑いながら、そのうちどこかに行ってしまった。
私はその場に崩れ落ちて、胸を押さえた。