空き瓶ロマンス



理解していた。


今まで、私に恋人なんかいなくてもクリスマスやバレンタインデーに平気だったのは、人に恋をする気持ちを知らなかったからだ。


何も知らない時が、一番強い。


先人達もそう言っている。


知ってしまったら、一人はこんなにも寂しい。


――今までの私は無知だったけど、その分、今よりもっと鈍感で、幸せだった……。
 

私はふらふらと自室に向い、コートのままベッドに倒れ込んだ。
 

部屋が寒い。


起きて、暖房を点けない限り、この室温は改善されない。
 

だけど、もう体は鉛のように重かった。
 

全部、億劫だった。


頭が痛い。


瞼が腫れているのが分かる。


目も喉も、ひりひりする。



(あれは、浮気、というものなのかな……)
 


私は再び、こっそりと泣いた。
 

そしてこの日を境に、私は信也さんへの連絡を、一方的に断ち切った。


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