空き瓶ロマンス
今の私は、自分を守る為の鎧が、すべて剥がれ落ちてしまっているのだから。
哀しい別れや、残酷な仕打ちでヒビだらけになった鎧は、恐ろしい現実の前に、完全に瓦解してしまっている。
素裸で無防備な心には、意地悪な言葉も、優しい気遣いも、ダイレクトに届いてしまう。
「……話せるようになってからでいいよ」と、みちるは言ってくれた。
私は、もしかしたらそんな日は来ないかもしれないと思いながら、ただ「うん」と返事をして、別れた。
帰宅した私の顔を見て、兄がどうしたんだと騒いだので、咄嗟に「映画を見て、泣いた」と嘘を吐いた。
すると、兄はころりと心配するのを辞め、満面の笑顔で言った。
どうやら、兄も兄で、気になる女の子にアプローチをし、それが成功したらしかった。
クリスマス目前という事もあって、その喜び方は、なんだか異常なくらいだった。
完全に、浮かれている。
つらい。
私は、はじめてくだらない理由で、兄を憎いと思った。
それは私の、抱え切らないほど大きな荷物を兄が持っていないという、ただそれだけの事。
途方もないほどの八つ当たりで、妬むなんてお門違いである。