夢の彼方
「お待たせ―――どうぞ」


そう言ってタケル君を中に入れ、渡辺の方を見る。


「すいません、今日は帰っていただけますか?」


「あの、彼は―――」


「友達です。彼の―――信次さんの友達でもある人です」


「それで、彼は何をしに?」


「―――それは、渡辺さんには関係のないことです。とにかく、今日は帰ってください」


繰り返す私に。


渡辺は渋々頷くと、わたしに背を向け去って行った・・・・・。


「ところで、なんでタケル君はここに?」


そのわたしの言葉に。


タケル君が一瞬固まり、大きな溜息を吐きだした。


「今日は、信次の初七日だろうが」


「あ―――」


そう言えば・・・・・


「葬式の後、言っただろ?初七日の日は俺も来るからって」


「そう―――だったね」


思いだした。


本当だったら親類だけで済ませる初七日の法要だけれど。


葬儀の時の義姉の様子を見たタケル君が、自分も参加すると言ってくれたのだ。


そんなことも忘れてしまうなんて。


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