夢の彼方
「大丈夫か?たった1週間しか経ってないのに、ずいぶん痩せたように見えるぞ」


「そんなこと、ないよ」


何も口にしていないわけではない。


食べ物は体が受け付けないが、飲み物は何とかなるのでゼリー状の栄養ドリンクなどを飲んで栄養補給するようにしていた。


もちろんそれだけでは足りないことはわかっていたけれど―――


働いて、家事をこなすだけで精いっぱいだった。


子供たちにも手伝ってもらっているけれど。


家族の面倒もまともに見れないなんて。


そして夫の初七日を忘れてしまうなんて・・・・・。


初七日の法要はに向かったわたしたち家族とタケル君。


実家の母は体の具合が悪くこられないとのことだったので、親類といってもわたしたち家族と義母、義姉だけだった。


信次の親類は静岡にいるが、義母や義姉との仲が悪く、葬儀には来ていたものの口もきかず、目も合わさずすぐに帰ってしまっていた。


そして今日もやはり来ていなかった。


「新しい男連れてくるなんて、ずうずうしい」


義姉の言葉に、あたしは子供たちの方を気にしながら口を開いた。


「やめてください。彼はわたしと信次さんの大事な友達です。子供たちもいるのにそんなこと―――」


「よく言うわよ!あんたのせいで信次は―――そこれそ、信次が生きてる時からできてたんじゃないの?」


「やめなさい、史子!」


見かねた義母が止めても、義姉は止まらなかった。


「この女―――この女のせいで信次は死んだのよ!あんなに働かされて―――!」


その時だった。


「すいません、市村信次さんのご家族の方でしょうか」


そう言ったのは、2歳くらいの小さな女の子を連れた、20代前半くらいに見える痩せた女性だった。
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