夢の彼方
「あの―――さっきのお話ですけど」


思いきって聞いてみると、ルークはさらに笑みを深くし、その深い海のような青い瞳でわたしを見つめた。


「急な話でびっくりされたでしょう。実は、2週間ほど前にあなたのブログを初めて見て―――ピンときたんです。ああ、この人こそ私の探していた人だと」


「わたし・・・?でもわたしは、コスプレをしているだけで特に何も―――」


「確かに。でも、何か違うものを感じたんですよ。わたしは、仕事で疲れていてもあなたのブログを見るだけで癒された。単なるコスプレのブログにどうしてそこまで癒しを感じるのか―――だが、今日あなたと実際にあって見てそれが少しわかったような気がします」


「どういうことですか?」


「あなたからは、とてもピュアなオーラを感じます。38歳とは思えないような―――それは容姿だけじゃなくて、心もきっと純粋だからだと思ったんですよ」


なんだか今まで経験がないくらいの褒め言葉のオンパレードで。


思わず気恥ずかしくてうずうずして来てしまう。


「あの―――それは大袈裟です。わたしは本当に普通の主婦で―――とてもそんな、ハリウッドなんて―――」


「社長は、あんたのためにここまで来たんだよ」


その時、それまで黙っていたレジーがそう言った。


「え―――?」


わたしのため・・・・・?


「1日に何度もあんたのブログ見ちゃあ、『彼女には絶対才能がある』ってしつこくて。だから、今回anysのコンサートに同行したらどうかって言ったんだ」


「え―――そうだったんですか?」


わたしの言葉に、ルークは照れくさそうに頭をかき。


「まあ、そうだね。本当はわたしは来る予定じゃなかったから、レジーにはずいぶん迷惑をかけてしまったけれど―――」


「いつものことだろ?」


肩をすくめるレジー。


『社長』と言いながらも、レジーだけはずいぶんルークと親しげだった。


それに―――


そういえば、あの時ルークの発言に、驚いていなかったのはレジーだけだった・・・・・。
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