夢の彼方
英語が不自由な役とはいえ、いきなりそんな大役ができるのだろうかと、不安になるわたしに、レジーが言った。


「周りの俳優はみんなベテランだ。もし多少ミスがあってもちゃんとフォローしてくれるよ」


そうして、あたしの方を見るとふと優しい笑みを見せた。


それは今まで見たことがないほど、優しい笑顔だった。


「あんたならできるよ。あのスティーブンは、できないことをやれとは言わない。厳しい人だけど、その人ならできると思

ってるから言うんだ。だから、自信を持ってやればいい」


不思議。


この人が大丈夫だと言ってくれると、本当に大丈夫な気がしてくる。


さっきまであんなに不安だったのに―――


「―――ありがとう。なんだかがんばれそうな気がしてきた」


そう言って笑うと、レジーはちょっと照れたように髪をかき上げ、目をそらした。


その表情がなんだかすごくかわいく思えて。


ちょっと、嬉しくなってきてしまった。


レジーのこんな表情が見れるなんて。


すごく得した気分。


わたしが頑張ったら―――


もっと、そういう表情を見せてくれるのかな。


そう思ったら―――


わたしは初めて、アメリカまで来てよかったと思えたような気がした。


何ができるかわからないけれど。


わたしにできるなら。


わたしにできると信じてくれる人がいるなら、がんばってみたいと。


本気でそう思ったのだ・・・・・。
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