夢の彼方
「―――ここに、わたしたちが住むんですか?」


「そうだよ。気に入らないかい?」


心配そうなルーク。


わたしは慌てて首をぶんぶんと横に振った。


「いえ!そんなことないです!じゃなくて―――こんな立派な家に、わたしたちが住んでいいのかって―――あの、家賃と

かは―――」


「ああ―――。この家はうちの会社で買い取ったんだ。だから名義は会社名義になってるから、あなたからは一応家賃を納

めてもらうことになってるんだけど―――一応、仕事が決まってギャラが振り込まれるようになったらその話をしようと思

ってたんだけどね。思いの他仕事も早く決まったし、月々1,000ドルの家賃でどうかな」


1000ドル?この豪邸が?


隣のルークの家はさらに大きいのだけれど。


だけど、もし日本だったらそんな家賃で借りられるような家じゃない。いや、ここアメリカでだって、そんな破格の家賃で

借りられるような家じゃないはず・・・。


「家賃はドラマの撮影が始まる3ヶ月後からでいいよ。それまではうちが払う毎月の給料以外は大した収入はないから、そ

の中から家賃を払ってしまったら4人で生活するのは大変だろう」


「え―――じゃあ、その間の家賃は?」


「そうだなあ。そのうち売れたら、そのギャラから差し引かせてもらうかな。そういうことはうちの経理がうまくやってく

れるよ」


暢気に笑っているルークだけど。


わたしはちょっとしたパニック状態だ。


仕事が決まったとは言ってもまだまだ駆け出しの新人だ。


実績なんてまるでないに等しいというのに。


こんな立派な家に住まわせてもらって、果たしていいんだろうか?
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