幼なじみは俺様王子。
……どうしよう。
そんな気持ちが駆け巡りあたしは言葉を発することさえ出来なくて。
「アンタ、盗み見!? 最低っ!」
すると、鋭い目つきであたしをキッと睨み、その女はあたしに手を振りかざした。
叩かれる……っ!
そう思った時、あたしはとっさに目を瞑った。
――パシッ
乾いた音がした、けれどあたしは痛くも痒くもなかった。
……あれ、なんで?
ゆっくり目を開けると、瀬川湊斗が女の手首を掴んでいた。
「アンタ、つまんねぇ」
瀬川湊斗は、その女に向かってわざとらしく「はぁ……」とため息をついた。
「湊斗、あたしとは遊びだったの!?」
違う意味で顔を真っ赤にして噴火寸前の女……。
今の顔はどうしたって、美人だとは思えない。
それとは裏腹に瀬川湊斗は涼しい笑みを浮かべていた。
「当たり前だろ?
最初からアンタみたいなオバサンには興味ねぇよ」
お、オバサンって……
あたし達と大して、年は変わらないけどね。
あたしは、心の中で突っ込んだ。
すると瀬川湊斗はあたしに視線をずらし、そして不意に抱き寄せた。