幼なじみは俺様王子。
石鹸のような香りがあたしの鼻をくすぐる。
「俺はアンタなんかよりも、ずっとこっちの方がいいな」
“こっち”っていうのはきっと、あたし。
なんか、あたしバカみたい……。
瀬川湊斗はこの女から離れるために、あたしを利用しているだけなのに。
ただ、それだけなのに。
不覚にも、このままでいたい。
そう願ってしまった。
「……アンタ、最低っ!」
女はきっと、もう噴火していたと思う。
「邪魔だから、とっとと出てってくれよ」
そんなことも気にもせずに冷たいセリフを吐き捨てる瀬川湊斗。
「この最低男っ!」
――ガラガラ、ピシャンッ!
そう言った女は物凄い剣幕で保健室を出て行った。
「ふぅ……助かった」
女が出て行っても、瀬川湊斗はあたしから離れようとしない。
「あ、あの……」
あたしは思いきって声をかけた。