花歌―ハナウタ

もう、いつでも逃げれる隙はあったけど、あたしは、自分の意志で龍司と一緒にいた。



龍司が、部屋にあたしを残して出ていっても、



あたしは自分の意志で、
龍司が帰ってくるのを待ってた。



龍司がいないとさみしい。


そう思うようになってた。


龍司の部屋を見渡すと、
一冊のアルバムが目についた。



(勝手に見たら怒られるよね…)



でも、気になる!



勝手に見ちゃいけないと思いつつも、

アルバムに手を伸ばす。



一枚目をめくると、
龍司の暴走族時代の写真。


すっごい気合い入ってるし!



単車にまたがって、特攻服着て、カメラ目線の龍司。


かっこいい!



龍司ってきれいな顔してるよなぁ…



龍司にすっかりハマってるあたしはバカみたいに写真に釘付け。



パラパラとページをめくっていると、    

女の人の写真がはさんであった。



かわいい人…



誰だろ…



写真をじっと見ていると、


『龍司いる?』



浩樹が部屋に入ってきた。


真由美と出会ったとき、
龍司と一緒にいた友達だ。


浩樹は、龍司の同級生で、小さいころからの幼なじみだと龍司から聞いた。



アルバムには、同じく特攻服を着た浩樹も写ってた。


『龍司は今、出かけてるよ』



『そーなの?あっ、写真!なつかしーな』



浩樹がアルバムを覗き込む。



あたしが見ていた女の人の写真を見て、
浩樹が言った。



『こいつ、誰か知ってんの?』



『ううん、知らない』



『龍司の元カノだよ』



『えっ…』



『ショック?』



『えっ、別に…』



そうは言ったけど、やっぱりショックだった。





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