しゃぼん玉

お父さん

色んな事がある中でも、お父さんは会いに来てくれた。

でも、大切な人が離れて心は少し風邪気味になっていた。
せっかく会いに来てくれた お父さんを困らせるようになってしまった。

そんな私との時間を どうにか変えたい お父さん…
寂しさや悲しさを上手く伝えられない私…

お父さんはユーホーキャッチャーを挑み始めた。

「これを取ったらサチは喜ぶ」

でも、取れない。
それでも何度も お金を入れ、挑み続ける お父さん…

(私)「もうヤメテ!!」
大きな声で言った。
欲しい物は そんな ぬいぐるみなんかじゃなかった。
そのすぐあと、ぬいぐるみの頭らへんの紐に引っかかった。
でも落ちず、引っかかったまま…
今度は店員を呼び出した。
引っかかった ぬいぐるみはもらえないのかを聞いていた。
店員は鍵を開け、引っかかったままの ぬいぐるみを私に渡してきた。

「はい、どうぞ」
笑顔だった。何も知らない店員は愉快なもんだ。
お父さんも嬉しそうに笑いかけてきた。私は全然 嬉しくなんかなかった。
(私)「私に服買ったり、ぬいぐるみ買うために離れてるの?
 それならイラナイ。だから一緒にパパの家に帰りたい」

お父さんは大きな ため息をついた。
(父)「そんなワガママ言わないで。サチは かしこいやろ」

悲しかった。

“いい子で いたら会いに来る”お父さんは別れ際、いつも言っていた。

お父さんの期待に応えるのも、いい子でいるのも疲れたのかもしれない。

そして これは最初で最後のわがままだった…
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