しゃぼん玉

菊の花(後編)

一人の看護婦が切り出した。

「この子の母親、見舞いに来たけど すぐに帰されたらしいわよ。
 朝から酒臭いし持って来た花が菊だったらしいのよ」

そのあと どんな会話だったのかなんて覚えていない。

子供は単純で純粋なもんだ。

“見舞いに来てくれた”そこだけを くりぬいて単純に喜び、
ママは私が大事なんだと純粋に信じた。

それだけが唯一の嬉しい出来事だった。


「菊の花は どうして植えないの?」
先生に聞いてみた。

その時の私の表情は少し嬉しそうだったに違いない。
それでも大人は残酷なものだ。

「菊の花は天国に行った人に あげる花だから ここには植えないの」

言葉が出なかった。

ママは私に いなくなってほしかったんだ・・・そう思った。
< 7 / 12 >

この作品をシェア

pagetop