ぼくらの被服部。
そうは言っても要は不精のたまものだが、幸いシャンプーのCMに出られそうなくらいさらさらの綺麗な髪をしているので気にする必要もない。
しかし放っておけば長い前髪をそのままにしているのでこうして毎朝留めてやっている。
俺は可愛いものが好きで女の子向けの雑貨屋も良く行く。しかしいくら可愛くても髪留めなんて買っても自分で使う機会なんてない。だから旭の前髪が長くて良かった。
「あれぇ? ココ、金魚の臭いしないね。とにかくもう血迷っちゃ駄目だよ。サナギ、おはよ」
ふらふらとベッドから出た旭は、ペットのイグアナに挨拶をした。緑色で質感が蝶か何かのサナギっぽいから、サナギと名付けたらしい。安直と言えば安直だが、シュールなセンスだ。
だっこされて乱暴に頬擦りをされてもサナギはじっと我慢している。もう慣れたのだろう。

平日の朝の時間は不思議な程早く過ぎてゆく。
それなのにカプチーノの泡をスプーンですくったのを少しづつ舐めて一向に食事が進まない旭にどうにか食べさせて洗面所へ押しやった。
「いつまで歯磨いてんの。あっ、歯磨き粉垂れるからしゃべったら駄目! 早く口ゆすいで」
旭は口から歯磨き粉を垂らし制服に付けるのを週に一度はやからす。今日も垂らしそうになったが、間一髪口にタオルを当てて間に合った。
「ふぅ……ぐりぐり拭かないで」
「じゃあ垂らすなよ。学校行くぞ」
「はいはい」
俺と旭の朝は毎日こういった感じ過ぎていく。


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