エングラム
「この前やったあの曲──」
そこから話題はクラスペディアのことになった。
実はケイはオタクだとか、ユウには年下の彼女がいてベタ惚れだとか。
まだ知り合って日も浅い彼らのことを、新しく知れるのは嬉しかった。
クラスペディアの話題だけでなく、いかにも恋人らしいお互いの話題もしたり。
時折沈黙になると、私が未だにそれに押し潰されそうになるのを悟って、何か歌を口ずさんでくれたりした。
「──そろそろ、送る」
壁にかけてある時計を見てから、シイが立ち上がって言った。
もうこんな時間か。
私も時計を一瞥し立ち上がる。
「はい、シラン」
置いてあった花束を、シイは両手で私に渡した。
「うわ、綺麗…!」
色とりどりの、鮮やかな花束。
それを崩さないよう優しく抱きしめる。
「ありがとうございます、シイ」
嬉しいだの綺麗だの。
そんなもので私の中が満たされる。
シイは眼鏡の奥の目を細めて、どういたしましてと私の頭を撫でた。