エングラム
「万が一だ」
サラリと読んで答えたシイ。
「あ、もしかしてテレビで見る演奏とかでドラムがガラスの板で囲まれてるのって」
「あぁスティックが飛ばないようにだ」
へぇ知らなかった、イジメじゃなかったんだと私は頷く。
「いやそれどんなイジメだよ?あと音の問題だな」
シイが答えたらユウとケイが小さく笑った。
「見てるこっちはシイの独り言だよね」
笑いながらそう言って──
「うるせぇ会話だ!」
シイが言った。
「シランちゃん一人でベースお願いね。僕は歌うから」
「無視すんなケイ!」
まぁまぁ落ち着いてくださいとユウが宥めて、シイはチッチッチと音を並べはじめた。
「え、私一人ですか?」
はっきり言う。自信全くなし。
「だってまず僕たちの構成ってギター一本、ドラム一本、ベース二本だよ?音がねぇー」
確かに。ギリギリだ。
メンバーを増やそうって考えなかったのか尋ねる。
「確かにギターはリズムとベースで二本欲しい。けど僕たちは普通の人を入れたくないんだよねぇ」