エングラム
ケイがぱんぱん、と手を叩いて空気を引き締めた。
「さぁじゃあシランちゃんも合わせよう」
私はかけていたストラップをぎゅっと握り、はいと返事をした。
「なんかやりたい曲あるー?」
前にもらった楽譜の中から、とりあえずできそうな曲のタイトルを言うことにした。
「ビートルズのHey Bulldog」
「わービートルズきたぁー」
嬉しそうにケイは笑ってベースから一音飛ばす。
「人気高い曲だよねー。これ好き。かなり即興性が強い曲なんだよ」
「へぇ」
ケイが教えてくれたことに頷く。
「じゃあシランちゃんは僕の隣で──ってシイ妬かないで」
「妬いてねぇよ!」
直ぐにシイは答えた。
うわぁそれはそれで悲しい。
「そこはオレの隣にこいって言うべきですよシイ」
「いやオレドラムだから!スティック飛んだら危ないから!」
ユウの言葉にも丁寧にシイは突っ込んだ。
え、スティック飛ぶの?