エングラム



リズミカル。
シャープなギターラインが入る。

本来な力強く──しっかりベースが足場を作っている。

──あれ?

弦と音を目で追っていたら、耳が違和感を伝える。


一緒に土台を作るドラムと、リズムが合ってない…?


そう気付いて音に迷う。

横でそれに気付いた聡いケイが間奏の間に私に耳打ちをした。

「これはベースとリズムを故意に狂わされてるんだよ」

ベースは支える存在だから。
トンとケイに背中を叩かれたら、しっかり響く音が出せた。

ケイものってきたのか、口から溢れる異国の言葉が楽しそうに弾む。


着いて行ける。


私が作った足場の上で、みんなの音が歩いてる。

ケイの甘くて苦い少年の声が。
ユウのシャープなギターが。

私の出しているベースの音の上を。

並び重なって、シイのドラム。

──ひとつの唄だ。

そう実感すると──気持ちが良かった。



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