エングラム
「今は眠ろう」
降る声もまた、優しい。
「──…シイ」
私の唇が紡ぐ声。
「シラン」
何を言うまでもない、呟かれるそれが夜の中では全て。
今まで何回もこうして泣いた。
この歳って情緒不安定ねと笑えないんだ。
「…シイ…」
一秒も絶えず、声が聴きたいの。
「──おやすみ、シラン」
彼の声に、再び私の意識はまどろむ。
「…ゃ、すみ…セージ」
「あぁ」
低い声が耳に溶ける。
そして朝まで、私は目を覚まさなかった。