エングラム
そして朝起きた私は、隣の布団にシイがいないことに気付いた。
微かに、シイの匂いが残る。
…漫画みたいに、目を合わせておはようとかは?
そして昨日の甘い夜を振り返る──、と妄想したところで思い出した。
「うわあ」
そう声を出しながら、上半身をガバッと起こす。
「寝ちゃったよ、色気もなんもないよ」
両の頬を手で抑え、しまった、とムンクのポーズをとる。
寝顔ひどかっただろうなと朝から重い気分になる私に、ノックの音が聞こえた。
「寝顔悪くなかったぞー、朝飯食うか?」
ガチャ、とノブを捻る音がして、シイが顔を見せる。
「朝から読まないでください…!」
「あー…甘い夜じゃなかったな、お前寝ちゃったし」
そう言ったシイに、何も言わず枕を投げた。
「あぶねっ」
シイはたやすくそれを受け止め、私に優しく投げ返す。
「疲れてたし、良いけどな。お前まだ中学生だし」
もう一回枕を投げた。やっぱり受け止められる。
「無言の抵抗は怖いぞシラン」
「すみません、朝だからツッコミ思い浮かばなくて」
いつの間にボケとツッコミの関係なんだ、とシイが言って続ける。
「朝飯」
「食べますっ!」