エングラム



「ときめき返してください」

花束をテーブルの上に置いて私は言う。

「お前用もちゃんとあるから」

くっくっと笑いながらシイが言った。

「どうする?その格好で行くか?」

「あー…」

着替えたいなと思ったが、他の衣類はない。

「昨日言ってた近所のおばさんからいただけませんかね」

「いや何それ。おばさん便利だなおい」

シイは眼鏡を持ち上げてから、ちょっと待っててと階段を上がった。

暫くするとワイシャツとカジュアルなズボンに着替えたシイが下りてくる。

こういうサラリーマンいそうだとか内心思った。

「とりあえず」

シイがそう言いながら、Tシャツとジーパンという無難なものを渡してくれた。

Tシャツはシンプルなもので、私が持っているものに少し近い。

シイがいない所で着替え、持っていたくしで髪を整える。

「行けるか?」

はい、と返事をしてシイと共に家を出た。

夫婦みたいとニヤつくのを我慢した私の顔を、ニヤニヤとシイが見てきた。



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