エングラム
「夫婦かそうか」
「……黙ってくださいダーリン」
頭を抑えながら私は言った。
シイは財布とケータイをポケットに突っ込み、花束を抱えている。
「車ないからなー、普段バイクだし」
続けられたタクシーで良いか?という質問を無視して、私は言う。
「シイっ、バイクに乗るんですか?」
「専ら移動はな」
二人乗りなんてしないからな、と言われた。
「えー…夢がない」
「危ないだろ」
「シイから手を離しませんから!」
「嬉しいんだけどなんかな」
そんな話を玄関先でして、タクシーを呼ぶと言うシイにバイクでとしつこくお願いする。
「お前なー、法律守ろう?」
地味な私は、学校で規則を無視出来るギャルタイプじゃあない。
はっきり言って恐怖感を覚えるタイプだ。だが、今は──好奇心。
私は確実に変わった。
「ちょっとだけ!」
「そのちょっとが人を駄目にする。好奇心は怖いぞー」
「よく恋愛小説で見るし良いじゃないですか」
今時の中高生ってどんな恋愛小説読んでんだ、とシイが花束で私の頭を叩いた。