エングラム
途端に、燃え上がる声援。
「いけえーっ!」
クラスメイトが口々に、委員長の名前を叫ぶ。
会話をしていた女子も、カラフルなハンドタオルを振り回して応援。
「頑張れーっ!」
私も叫んだ。
スピーカーが荒い音で曲を流している。
ジャック・オッフェンバック作曲の天国と地獄。
競走などでよく用いられる、広く知られているオペレッタの曲だ。
音割れが激しいそれに気をとられる人はなく、視線はみんな、選手に向けて。
ハードルを越え、平均台を渡り、ネットをくぐり、麻袋に入ってゴールする。
その障害物競走で、委員長は5位中、3位だった。うわぁリアルな数字。
「あいつ帰ってきたら労ってあげなよ!」
と、彼女に肩を叩かれた。
「えー、なんで」
そんなことを言ってるうちに、委員長がクラスのテントに戻ってきた。
すぐに見ていた男子が彼を囲み、お疲れなどと声をかけている。
「あーっ!障害物疲れた!」
男子たちと声を交わすと、彼は私の名前を呼んで傍にきた。