エングラム



額に触れた唇は、誰のものなのか。


頭の中に浮かんだ、記憶ともとれないその声たちは。
  モヤ
漂う靄が濃くて、もしかしたら夢なのかもしれない。

いつかと誓った日というのは、私の夢でしかないのかもしれない。

そう思うとたまらなく、たまらなく。
たまらなく──哀しくなる。

切なくなって、その夢がなんなのかと胸が痛くなる。

夢と思い出の境界線は、ひどく曖昧だ。




私が曲を弾き終えると、委員長はありがとうと拍手をくれた。

曲の想いや意味は、受け取り手次第なのだ。

また、そんな会話をしたような気がした。

気がした、が多いなと笑いが込み上げた。


私の笑いをどう受け取ったのか、委員長が微笑んだ。



──…お前が望むようにお前を愛そう…。

鮮やかな花があった気がする。

──…永遠と、変わらぬ愛と──

私と誰かは、その永遠を何に誓ったのだろうか。



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