エングラム



何も言わず、もう一度黒板消しを手に取り構えた。

委員長は慌てて一歩退きながらまくし立てる。

「ごめんごめん!だってそうじゃん!3年間お前いつもあれだったし!」

「………」

黒板消しを叩かず、そうですかと言うだけに留めた。

「あれ、怒った?」

拍子抜けしたように委員長が私の表情を伺った。

「その通りだし、ね。──…それより3年間、って」

同じクラスだったっけと首を傾げた。

「!──気にすんなたまたま見えただけだ!」

そう一方的に言った委員長は私の横を擦り抜けて、移動してください、と教室いっぱいに声をなげた。

「……まさか、ね」

一応私だって年頃の女の子なわけで。ちょっと期待するわけだけど。

クラスメイトに囲まれる彼を見て、有り得ないね、と自分に言った。



< 336 / 363 >

この作品をシェア

pagetop