エングラム
何も言わず、もう一度黒板消しを手に取り構えた。
委員長は慌てて一歩退きながらまくし立てる。
「ごめんごめん!だってそうじゃん!3年間お前いつもあれだったし!」
「………」
黒板消しを叩かず、そうですかと言うだけに留めた。
「あれ、怒った?」
拍子抜けしたように委員長が私の表情を伺った。
「その通りだし、ね。──…それより3年間、って」
同じクラスだったっけと首を傾げた。
「!──気にすんなたまたま見えただけだ!」
そう一方的に言った委員長は私の横を擦り抜けて、移動してください、と教室いっぱいに声をなげた。
「……まさか、ね」
一応私だって年頃の女の子なわけで。ちょっと期待するわけだけど。
クラスメイトに囲まれる彼を見て、有り得ないね、と自分に言った。