洒落にならない怖い話
そしてもう一つ気付いたことがある。


男と女の首のうなじの辺りに入れ墨が彫ってあった。


それは両方とも同じ入れ墨で、薔薇の模様だった。


「これはもしかして・・・」と


祖父は家族と相談した結果、二人を一緒の塚に祀ることにした。


その後、豊漁はこれといって続かなかったけれど、祖父の嫁、つまり私の祖母が子供を身籠もったことで一家は大喜びして、これもエビスサンのお陰だと暫くは塚にお供えを欠かさなかったそうだ。


何か怖いような目出たいような変な話だというのが、話を聞いた直後の私の感想だった。


祖父は「どうだ、怖かったろう」とクシャッとした顔を余計にしわくちゃにしながら笑った。


暗くなったので港へ戻った。


家に帰ると仏壇と神棚に今日も無事に帰ることができましたと祖父と一緒にお祈りする。


その時、ふと気が付いたことがある。


祖父の父と母の遺影の他に、後ろ側に1人のおかっぱ頭の女の子の写真があった。


「この人誰?」


祖父に聞くと「娘だよ」という。


はて、その時まで父に姉妹がいたなんて聞いたことがない。
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