ク ロ
『いやぁ、すごい天気だねぇ。3月になってこんな荒れる年はそうないねぇ。まだ冬タイヤのままで良かったよ。』

40そこそこくらいの、点検係のおじさんは気さくにそう言って、作業に取りかかった。
およそ5分程で作業は終わり、おじさんが工具を片付けているところで

ミィ・・・ミィ・・・

一層儚げな声が聞こえた。

『ありゃ…』

おじさんは、私が懸命に気づかないふりをしている事実を、ポロリと口にしてしまった。


『こりゃダメかもしれんなぁ…』
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