依存~愛しいキミの手~
「ごめん、気分悪くなってきちゃった…先帰るね」


そう告げて、椅子にかけたコートとバッグを持ち早足で店を出た。


店から少し歩いた所でしゃがみ込む。


膝に頭をうずめた。


涙が勝手に溢れ出てくる。


心臓もバクバクしてる。


名前を聞いただけなのに、圭介の笑顔で頭がいっぱいになる…。


会いたいよ…。


会えないって、会いに行く資格がないって分かってる。


それでも、今すぐ圭介に会いたい…。


圭介…圭介…


心の中で何度も圭介を呼んだ。


頭の中の圭介が優しく微笑み、余計に胸が苦しくなった。


ふわっと背中に何かかかった。


ハッとして顔を上げると、さっきのギャル男が立っていた。


「…コートくらい着ろよ」


肩を見るとダウンがかかっている。


渋谷で初めて圭介に会った時、同じことをされた…。


また涙が溢れ出てくる。


頭をうずめていると


「大丈夫か?」


と、頭に手が触れた。


!?


バシッ


思わず手を振り払ってしまった。


「やめて…」


私はギャル男を睨みつけ言った。


頭を優しくなでてくれた圭介を思い出すのが嫌だったわけじゃない。


圭介が頭をなでてくれるのがすごくすごく好きだったから、触られたくなかった。


私は手で涙を拭って立ち上がり、ギャル男にコートを投げつけ自分のコートを羽織り歩き出した。


完璧な八つ当たり。


心配してきてくれたんだろうけど、あいつのせいで涙が止まらなくなった。


ムカつく思い出させやがって…。
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