依存~愛しいキミの手~
身分証を持っていないと言ったのに、働かせてもらえた。


私はA店しか働いたことがなかったので、あの店が普通だと思っていた。


箱の汚さ、時給の安さ、キャスト・スタッフの教育のなさ、キャストのレベル、客層の悪さ、料金設定の低さ、とにかく全てに驚き、A店は高級店だったんだと今更ながら気づく。


A店で身についたことは忘れていなかった。体に染み付いていたと言ったほうが正しいかもしれない。


おかげで、すぐに売れるようになった。


でもA店の時に比べれば売上も給料も半分以下だった。


1日に30万売ったら誉められるレベル…。


前みたいに、何か張り合う物があるわけでもない。


必死に頑張らなくても、売上がいく。


周りのキャストも、やる気がないのは伝わる。


キャバクラってこんな物だったっけ?


何かこう、もっとキラキラして心の底から面白いと思えて、すごく充実した気持ちになれる物じゃなかったっけ?


私はキャバクラで働いていくうちに、虚しさを感じるようにもなった。


だけど、働かないと一輝のお店に行けない。


一輝をつなぐためには働かないと。


そんな気持ちで働いていた。
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