依存~愛しいキミの手~
オヤジが沈黙を割るように、私のタバコの箱から1本取り出し火をつけた。


タバコを吸うオヤジの姿に、私も姉ちゃんもお母さんも釘付けになった。


ゆっくりと煙りを吸っては吐き出す。


どのくらい振りに見た…?


どのくらいなんて物じゃない。


私の記憶の中にオヤジがタバコを吸う姿なんてあったかな…?


「…どこにあんだ…病院…」


短くなったタバコを灰皿に押し付け、オヤジが重い空気の中言葉を発した。


「え…あ…まだ聞いてな…、本当に…ごめんなさい…」


私は涙が溢れ出てきて声を上げ泣いた。


オヤジが私の頭に優しく手を置く。


「…一緒に頑張っていこう。まず顔を冷やしてこい…」


私は両手を畳につき、めり込むんじゃないかってくらい畳におでこを強く当てた。

「本当に…ごめんなさい…ありがとうございます…」

畳に涙がポタポタこぼれ、小さな水たまりができた。
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