∫hiRo 〜雨の向こうで僕が思うこと〜
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公園にも桜の木があった。
ご主人の家のものよりも、ずっとずっと大きな桜の木だ。
ショコラは、桜の花が咲くのが本当に楽しみなようで、朝日が昇るとすぐ公園に様子を見に来るようになった。
そして軽々と桜の木に上ると、ツボミの大きさを観察した。
「どう?」
僕は桜の木を見上げて、ショコラに大声で尋ねた。
「宗一郎!この分だと、あと3回朝が来たら満開になるぞ! おまえ、びっくりするなよ!」
ショコラは桜の枝の間から顔をのぞかせると、興奮した様子で僕に叫んだ。
「もうすぐなんだね? 楽しみだなぁ」
僕もとても楽しみだった。
ショコラによる桜の観察が終わると、僕たちはお喋りをしたり、走り回ったりして、思い切り遊んだ。
そして、それにも飽きると、
「またな」
と言って、ショコラはまた、家とは反対の方向へ、僕は土手へと向かった。
あの日から、シロは毎日(雨の日を除いて……)例のお菓子を持って来てくれた。
今日も堤防でシロを待ちながら、春の心地よい匂いに包まれて、僕は知らぬ間に眠っていた。