傷恋(キズコイ)
翌日。

彼女と神崎さん。

どちらも僕の講義には出ていなかった。

当然といえば当然で、神崎さんに至っては登校どころではないだろう。

いつも、決まって二人が座っている場所がポッカリと空いている。

あの二人がいないと妙に華やかさに欠けるな、なんてバカな事を考えてしまった。

生徒が二人いないだけ。
ただ、それだけだ。

つい、空席に目が向いてしまうのを意識的に避けた。






たかが生徒二人の事でこんなにも講義に身が入らないなんて、僕は何をやってるんだ。

僕にしては珍しく、研究室で何をするでもなくぼんやりしているとノックが聞こえた。

誰だろうと思いつつ返事をすると、入ってきたのは榊だった。

まさか、彼が直接訪ねてくるなんて思ってもいなかった僕は何の心の準備も出来ておらず狼狽える。

にこやかに入室する榊は、僕が彼の婚約者である神崎さんに何をしたか知ってるんだろうか?

彼がここを訪ねてきたという事は少なくとも神崎さんが僕の教え子であると知っているはず。

僕は榊の出方を窺う事にした。
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