ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~




櫂が、意思的に鎮めた低い声を出した。


「氷皇。訊きたいことは山にある。

だが、それ以前にお前には"偶然"という言葉など存在しないはずだ。

芹霞使ってどうするつもりだ」


思わず全身の鳥肌が立ってくる。

 
何だ、この状況。


ぶわっと…今にも拡がって襲い掛かりそうな鋭利な冷気と、刃物のように攻撃的な煌の威嚇。


それに長年見慣れているはずの、この幼馴染でさえ…辟易しているというのに、まるで子供相手をしているような、余裕の青い爽やかさ。


「……はあっ。感謝されてもいいはずなんだけれどねえ。俺達は今までだって、実に友好的な関係を築いて「ど・こ・が・だ!」


煌が即否定した。


「どうして紫堂って皆つれないんだ? ワンワン、君は違うよね? だって元々……」


バキッ。


凄い音がして振り向けば、

煌が横の壁に拳を打ち付けていた。



大きな陥没。


ぱらぱらと壁の断片が舞い落ちる。


これ…コンクリート、だよね?

うん、どう見ても…コンクリート…。


「……それ以上口を開くんじゃねえよ。あの"休戦同盟"がなければ、お前を殺してる」


すると男は、あはは~と爽やかに笑った。


「休戦って言っても、作ったのは紅皇。俺は無関係だ。一方的に言われてもねえ」


「……氷皇」


櫂が言った。

部屋の温度が更に下がったのは、櫂の低温の声音故に。


痛い。

肌という肌が、櫂に蝕まれる。



「黙らないと……消すぞ?」



冗談にも思えない、挑発的な声の響き。

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